(1) 経緯
平成3年の廃棄物処理法改正において、多量の産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者に対して、都道府県知事等が個別にその事業場の産業廃棄物処理に関する計画の作成を指示できる制度が設けられました。また、平成9年の法改正では、これらの事業者が作成する処理計画について、廃棄物の減量という視点を設けることが明確になりました。さらに、平成12年6月の廃棄物処理法の改正では、一定の量以上の産業廃棄物または特別管理産業廃棄物を排出する事業者(多量排出事業者)に対して、廃棄物の減量や適正処理に関する処理計画および実施状況報告の作成および都道府県知事への提出が義務づけられました。また、都道府県等では、これらの処理計画やその実施状況を1年間公衆の縦覧に供する方式で公表されることになりました。
(2) 多量排出事業者
廃棄物処理法で定める多量排出事業者とは、その事業活動に伴って多量の産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者であり、産業廃棄物の前年度の発生量が合計1,000トン以上、または、特別管理産業廃棄物の前年度の発生量が50トン以上の事業場を設置している事業者(中間処理業者は除く)です。なお、都道府県等によっては、発生量がこれらの数値を下回っている場合でも、行政指導等により進めている場合もあります。
(3) 発生量のとらえ方
産業廃棄物の発生量については、一般的には廃棄物の処理として何の操作も加えない時点での量を指します。しかし、事業活動の内容や廃棄物の種類によっては、生産工程の中で脱水等の減量操作が加えられるような場合が想定されます。そこで、発生量については、生産工程の中で行われる減量操作等の工程を経て発生する場合には、その発生時点での量とし、生産工程を経た後に事業場にある施設等で廃棄物の処理としての操作が行われる場合は、この廃棄物処理工程の前での量とします。
(4) 処理計画および実施状況報告書の作成単位
- 製造業等
製造業の場合は、事業場ごとに処理計画を作成することが基本となります。多量排出事業者にあたるかは事業場ごとに判断します。なお、多量排出事業者が処理計画等を作成する際、同一敷地内に関連会社の事業場があり、一体的に産業廃棄物の処理を行っている場合には、処理計画等の中に関連会社の事業場から生ずる産業廃棄物の処理を含めることもできます。
また、事業者が区域内に無人施設等の複数の関連施設を設置していて、それらの施設から生じる産業廃棄物を一体的に管理している場合には、それらの施設を含めて多量排出事業者に該当するかどうかを判断します。この場合には、処理計画等の作成はそれら区域内の施設を管轄している支店等が行うことになります。 - 建設業等
建設業の場合、廃棄物の減量その他適正な処理の促進という目的に照らして、区域内の作業所(現場)を総括的に管理している支店等ごとに区域内に係る処理計画等を作成することを基本とします。その場合、多量排出事業者にあたるかどうかは、区域内の作業所(現場)を合わせて判断します。
なお、多量排出事業者が処理計画等を作成する際に、同一敷地内に関連会社の事業場があり、一体的に産業廃棄物の処理を行っている場合には、作成する処理計画等の中に関連会社の事業場から生ずる産業廃棄物の処理を含めることもできます。
建設工事等(土木建築に関する工事(建築物その他の工作物の全部または一部を解体する工事を含む。))における排出事業者には、原則として元請業者が該当します。共同企業体(JV)においては、その構成員の代表者が該当することになります。
(5) 処理計画の作成・提出
多量排出事業者は、次の1)~10)に示す内容に関する処理計画を定められた様式で作成し、当該年度の6月30日までに都道府県知事等に提出する必要があります。多量排出事業者による処理計画の作成の制度は、事業者の自主的な取組を推進するとともに、これを通じて減量化等を推進する趣旨のものであるため、各事業者は、その事業内容や廃棄物の種類、性状等に応じて、計画の内容を柔軟かつ自主的に定めることができます。
(法第12条第9項、規則第8条の4の5、規則様式第二号の八)
- 氏名または名称および住所ならびに法人にあっては、その代表者の氏名
- 計画期間
- 当該事業場において現に行っている事業に関する事項
- (特別管理)産業廃棄物の処理に係る管理体制に関する事項
- (特別管理)産業廃棄物の排出の抑制に関する事項
- (特別管理)産業廃棄物の分別に関する事項
- 自ら行う(特別管理)産業廃棄物の再生利用に関する事項
- 自ら行う(特別管理)産業廃棄物の中間処理に関する事項
- 自ら行う(特別管理)産業廃棄物の埋立処分または海洋投入処分に関する事項
- (特別管理)産業廃棄物の処理の委託に関する事項
また、処理計画の内容は、都道府県知事等によりインターネットの利用により速やかに公表されます。
(6) 実施状況の報告
多量排出事業者は、作成した処理計画の実施状況に関する報告書を、定められた様式で作成し、翌年度の6月30日までに都道府県知事等に報告する必要があります。報告された内容は、都道府県知事等によりインターネットの利用により速やかに公表されます。
(法第12条第10項、規則第8条の4の6、規則第8条の4の7、規則様式第二号の九)