産廃知識 最終処分場

最終処分場は、環境保全の観点から汚水の外部流出、地下水汚染、廃棄物の飛散・流出、ガス発生、そ(鼠)族昆虫の発生等を防止しながら、所要量の廃棄物を安全に埋立処分できる構造物です。
最終処分場は、廃棄物処理法によって遮断型最終処分場、安定型最終処分場および管理型最終処分場の三つに分類され、各々の処分場に埋立処分できる産業廃棄物と最終処分場の構造基準・維持管理基準が定められています。各最終処分場の特徴的な構造基準と維持管理基準を表1に示します。

表1 最終処分場の特徴的な構造基準と維持管理基準
最終処分場の種類 構造基準 維持管理基準
遮断型最終処分場
・貯留構造物(外周・内部仕切り設備)の仕様(鉄筋コンクリート製等)を設定
・一区画の規模(埋め立て面積50m2以下、埋立容量250m3以下)を設定
・地表水の埋立地へ流入を防止できる開渠等を設置
・埋立処分終了後は外周仕切設備と同等の覆いにより閉鎖
安定型最終処分場
・浸透水採取設備を設置
・浸透水の水質検査の実施
・搬入物の展開検査の実施
・埋立処分終了後に埋立処分以外に利用する場合は約50cm以上の土砂等の覆いにより開口部を閉鎖
管理型最終処分場
・浸出液処理設備を設置
・二重の遮水層を設置(地盤の透水性が条件)
・地表水の埋立地へ流入を防止できる開渠等を設置
・放流水の排出基準の遵守
・発生ガスの対策と管理
・埋立処分終了後は約50cm以上の土砂等の覆いにより開口部を閉鎖

(1) 遮断型最終処分場

遮断型最終処分場に埋立処分される廃棄物は、有害な燃え殻、ばいじん、汚泥、鉱さいなどで、表2に示す環境省令で定める判定基準に適合しない施行令第6条第1項第3号ハ(1)~(5)に掲げる廃棄物(有害な産業廃棄物)および第6条の5第1項第3号イ(1)~(7)に掲げる廃棄物(有害な特別管理産業廃棄物)です。遮断型最終処分場には、廃棄物中の有害物質を自然から隔離するために、処分場内への雨水の流入防止を目的として、覆い(屋根等)や雨水排除設備(開渠)が設けられています。

(2) 安定型最終処分場

安定型最終処分場には、有害物や有機物が付着しておらず、雨水等にさらされてもほとんど変化しない安定型産業廃棄物(廃プラスチック類、ゴムくず、金属くず、ガラスくず・コンクリートくず及び陶磁器くず、がれき類のいわゆる安定5品目及びこれらに準ずるものとして環境大臣が指定した品目(施行令第6条第1項第3号イ(1)~(6))が埋立処分されます(施行令第7条第14号ロ)。

  1. 廃プラスチック類(次にア~エに掲げるものを除く)
    1. ア.自動車等破砕物[自動車(原動機付自転車を含む)もしくは電気機械器具またはこれらのものの一部{自動車の窓ガラス、自動車のバンパー(プラスチックまたは金属から成る部分に限る)および自動車のタイヤを除く}の破砕に伴って生じたもの]
    2. イ.廃プリント配線板(鉛を含むはんだが使用されているもの)
    3. ウ.廃容器包装(固形状または液状の物の容器または包装であって不要物であり、アルキル水銀等の有害物質または有機性の物質が混入し、または付着しているもの)
    4. エ.水銀使用製品産業廃棄物
  2. ゴムくず(事業活動に伴って生じたもの)
  3. 金属くず(自動車等破砕物、廃プリント配線板、鉛蓄電池の電極であって不要物であるもの、鉛製の管または板であって不要物であるもの、廃容器包装、水銀使用製品産業廃棄物を除くもの)
  4. ガラスくず、コンクリートくず(工作物の新築、改築または除去に伴って生じたものを除く)及び陶磁器くずで事業活動に伴って生じたもの(自動車等破砕物、廃ブラウン管(側面部)、廃石膏ボード、廃容器包装、水銀使用製品産業廃棄物を除くもの)
  5. 工作物の新築、改築又は除去に伴って生じたコンクリートの破片その他これに類する不要物(事業活動に伴って生じたもので「がれき類」という)
  6. 上記の産業廃棄物に準ずるものとして、環境大臣が指定する産業廃棄物(現在では、廃石綿等又は、石綿含有廃棄物の溶融物が指定されている)

これらの安定型産業廃棄物以外の産業廃棄物の搬入を確実に防止するために、搬入した産業廃棄物の展開検査と浸透水の定期的な水質分析の実施が義務付けられています。
安定型産業廃棄物は、有害物質を含まず分解しない産業廃棄物であり、メタンなどのガスや汚濁水が発生せずに周辺環境を汚染しないとして、処分場の内部と外部を遮断する遮水工や、浸透水(安定型産業廃棄物の層を通過した雨水等)の集排水設備とその処理設備の設置は義務付けられていません。

(3) 管理型最終処分場

管理型最終処分場は、表2に示す金属等を含む産業廃棄物の埋立処分に係る判定基準により、遮断型最終処分場でしか処分できない産業廃棄物以外のものが埋立処分されます。具体的には、廃油(タールピッチ類に限る)、紙くず、木くず、繊維くず、動植物性残さ、動物のふん尿、動物の死体、燃え殻、ばいじん、汚泥、鉱さい等及びその廃棄物を処分するために処理したもの(施行令第2条第13号)を埋立処分します(施行令第7条第14号ハ)。
埋立廃棄物中の有機物等の分解や金属等の溶出に伴い、汚濁物質を含む保有水等(埋め立てられた廃棄物が保有する水分および最終処分場内に浸透した地表水)やガスが発生します。そのため、最終処分場内部と外部を貯留構造物や二重構造の遮水工によって遮断して、保有水等による地下水汚染を防止するとともに、発生した保有水等を集排水管で集水し、浸出液(最終処分場の外に排出された保有水等)処理設備で処理後に放流しています。また、発生したガスは、ガス抜き設備によって、埋立廃棄物層から排出しています。

表2 金属等を含む産業廃棄物の埋立処分に係る判定基準1)
有害物質 特別管理産業廃棄物2)
水銀を含む燃え殻とばいじんの処理物4) その他の燃え殻、ばいじん、鉱さい、その処理4) 水銀又はシアンを含む汚泥の処理4) その他の汚泥、その処理4)
試験方法(単位) 溶出試験(mg/ℓ以下)
アルキル水銀化合物 不検出 不検5) 不検出
水銀又はその化合物 0.005 0.0055) 0.005
カドミウム又はその化合6) 0.09 0.09
鉛又はその化合6) 0.3 0.3
有機燐(リン)化合物 1
六価クロム化合6) 1.5 1.5
砒(ヒ)素又はその化合6) 0.3 0.3
シアン化合物 1
PCB 0.003
トリクロロエチレン 0.1
テトラクロロエチレン 0.1
ジクロロメタン 0.2
四塩化炭素 0.02
1,2―ジクロロエタン 0.04
1,1―ジクロロエチレン 1
シス―1,2―ジクロロエチレン 0.4
1,1,1―トリクロロエタン 3
1,1,2―トリクロロエタン 0.06
1,3―ジクロロプロペン 0.02
チウラム 0.06
シマジン 0.03
チオベンカルブ 0.2
ベンゼン 0.1
セレン又はその化合6) 0.3 0.3
1,4―ジオキサン 0.57) 0.5
試験方法(単位) 含有量試験(ng-TEQ/g以下)
ダイオキシン類(DXN)8) 3ng-TEQ/g 3ng-TEQ/g
基準に適合しない
産業廃棄物の名称
有害な特別管理産業廃棄物
有害物質 特別管理産業廃棄物以外の産業廃棄物3)
水銀を含む燃え殻とばいじんの処理4) その他の燃え殻、ばいじん、その処理4) 水銀又はシアンを含む汚泥の処理4) その他の汚泥、その処理4)
試験方法(単位) 溶出試験(mg/ℓ以下)
アルキル水銀化合物 不検出 不検出
水銀又はその化合物 0.005 0.005
カドミウム又はその化合6) 0.09 0.09
鉛又はその化合6) 0.3 0.3
有機燐(リン)化合物 1
六価クロム化合6) 1.5 1.5
砒(ヒ)素又はその化合6) 0.3 0.3
シアン化合物 1
PCB 0.003
トリクロロエチレン 0.1
テトラクロロエチレン 0.1
ジクロロメタン 0.2
四塩化炭素 0.02
1,2―ジクロロエタン 0.04
1,1―ジクロロエチレン 1
シス―1,2―ジクロロエチレン 0.4
1,1,1―トリクロロエタン 3
1,1,2―トリクロロエタン 0.06
1,3―ジクロロプロペン 0.02
チウラム 0.06
シマジン 0.03
チオベンカルブ 0.2
ベンゼン 0.1
セレン又はその化合6) 0.3 0.3
1,4―ジオキサン 0.57) 0.5
試験方法(単位) 含有量試験(ng-TEQ/g以下)
ダイオキシン類(DXN)8)
基準に適合しない
産業廃棄物の名称
有害な産業廃棄物
  • 注1)指定下水汚泥は省略。
  • 注2)特別管理産業廃棄物の埋立処分基準は、廃棄物処理法施行令第6条の5第1項第3号による。
  • 注3)産業廃棄物の埋立処分基準は、同施行令第6条第1項第3号による。
  • 注4)処理物とは、その廃棄物を処分するために処理したもので、廃酸、廃アルカリ以外のものをいう。
  • 注5)鉱さい、その処理物に適用する。
  • 注6)3倍値基準である。
  • 注7)燃え殻、ばいじん及びその処理物に適用。
  • 注8)DXNは、鉱さいを除いた燃え殻、ばいじん、汚泥及びその処理物に含まれる濃度を示す。
  • 単位のng:ナノグラム(1gの10億分の1、10-9 g)
  • 毒性等量(TEQ:Toxicity equivalent quantity):DXNは、通常は混合物として環境中に存在するので、摂取したDXNの毒性の強さは、各異性体の量にそれぞれの毒性等価係数(TEF:Toxicity equivalency factor)を乗じた値を総和した毒性等量として表す。毒性等価係数は、最も毒性が強いとされる2,3,7,8-TCDDの毒性を1とし、各異性体の毒性の強さを表したものである。
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