(1) 法的位置付け
マニフェスト制度は、厚生省(現環境省)の行政指導で平成2年に始まりました。その後、平成5年4月には、産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性、その他の人の健康や生活環境に被害を生じるおそれのある特別管理産業廃棄物の処理を他人に委託する場合に、マニフェストの使用が義務付けられました。
平成10年12月からはマニフェストの適用範囲がすべての産業廃棄物に拡大されるとともに、従来の複写式伝票(以下、「紙マニフェスト」という)に加えて、電子情報を活用する電子マニフェスト制度(以下、「電子マニフェスト」という)が導入されました。これにより、排出事業者は紙マニフェストまたは電子マニフェストを使用することになりました。
さらに、平成13年4月には、産業廃棄物に関する排出事業者責任の強化が行われ、マニフェスト制度についても、中間処理を行った後の最終処分の確認が義務付けられました。
また、令和 2年 4 月からは、年間 50トン以上(※)の特別管理産業廃棄物(PCB 廃棄物を除く。)を排出する事業場で特別管理産業廃棄物(PCB 廃棄物を除く。)の処理を委託する場合、電子マニフェストの使用が義務付けられました。
(※)前々年度の発生量
(2) 排出事業者の処理終了確認
排出事業者(中間処理業者が排出事業者となる場合も含む)は、マニフェストの交付後90日以内(特別管理産業廃棄物の場合は60日以内)に、委託した産業廃棄物の中間処理(中間処理を経由せず直接最終処分される場合も含む)が終了したことを、マニフェストで確認する必要があります。また、中間処理を経由して最終処分される場合は、マニフェスト交付後180日以内に、最終処分が終了したことを確認する必要があります。
排出事業者は、上記の期限を過ぎても処理業者からのマニフェストによる処理終了報告がない場合には、委託した産業廃棄物の処理状況を把握した上で適切な措置を講ずるとともに、その旨を都道府県等に報告する必要があります。
(3) 電子マニフェスト制度
電子マニフェスト制度は、マニフェスト情報を電子化して、排出事業者、収集運搬業者、処分業者の3者が情報処理センターを介したネットワークでやり取りする仕組みです。
法第13条の2の規定に基づき、公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターが全国で1つの「情報処理センター」として指定され、電子マニフェストの運営を行っています。
電子マニフェストを利用する場合には、排出事業者と委託先の収集運搬業者、処分業者の3者の加入が必要ですが、関係者間における情報管理の合理化によって、「事務処理の効率化」、「データの透明性」の確保、「法令の遵守」の徹底等を図ることができます。
(4) 紙マニフェストの運用
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1)紙マニフェストの交付
排出事業者は、マニフェスト(7枚複写A・B1・B2・C1・C2・D票・E票)に必要事項を記入し、交付します。廃棄物の引渡し時に、収集運搬業者による署名または押印を得て後、A票を手元に残し、残りのマニフェストを収集運搬業者に渡します。排出事業者はそのA票を5年間保存します。 -
2)運搬終了時
収集運搬業者は、残りのマニフェストを廃棄物とともに処分業者に渡します。処分業者は所定欄に署名のうえ、B1票B2票を収集運搬業者に返します。収集運搬業者はB1票を自らの控えとして保管し(法律上の保存義務はないが、保存しておくことが望ましい)、B2票を排出事業者に送付(10日以内)し、運搬終了を報告します。 -
3)処分終了時
処分業者は、処分終了後、マニフェストの所定欄に署名し、収集運搬業者にC2票を、排出事業者にD票(最終処分の場合はE票も併せて)を送付(10日以内)し、C1票は自ら保存します。処分(中間処理)業者は受託した産業廃棄物を中間処理した残さ(中間処理産業廃棄物)の最終処分が終了するまでの間E票を保管します。 -
4)最終処分終了時
処分業者は、自ら交付したマニフェスト(2次マニフェスト)等により最終処分の終了を確認し、保管していた排出事業者のE票に最終処分終了年月日、最終処分の場所を記載の上、排出事業者に返送(10日以内)します。 -
5)返送されたマニフェストの確認および保存
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ア.排出事業者による確認
排出事業者は、A票と収集運搬業者、処分業者から戻ってきたB2票、D票、E票を照合し、適正であることを確認しなければなりません。 -
イ.マニフェスト伝票の保存
排出事業者および処理・処分業者が保存しなければならないマニフェスト伝票は、下表のとおりです。保存期間は、マニフェストの交付日または送付を受けた日から5年間です。
(法第12条の3第2、9、10項)
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ア.排出事業者による確認
区分 | 保存するマニフェスト伝票 | |
---|---|---|
排出事業者 | A票、B2票、D票、E票 | |
収集運搬業者 | C2票 | |
中間処理業者 | 処分受託者として | C1票 |
処分委託者として | A票、B2票、D票、E票 | |
最終処分業者 | C1票 |
(5) 電子マニフェストの運用
-
1)マニフェスト情報の登録 <排出事業者⇒情報処理センター>
排出事業者は産業廃棄物を収集・運搬者または処分業者に引き渡してから3日以内に必要情報をパソコンで入力し情報処理センターにマニフェスト情報の登録を行う(①の登録) -
2)運搬終了報告 <収集運搬業者⇒情報処理センター>
収集運搬業者は①により登録されたマニフェスト情報に対して、運搬が終了した日から3日以内に情報処理センターに運搬終了報告を行う(②の報告) -
3)中間処理終了報告 <中間処理業者⇒情報処理センター>
中間処理業者は①により登録されたマニフェスト情報に対して、中間処理が終了した日から3日以内に情報処理センターに処分(中間処理)終了報告を行う(③の報告) -
4)運搬終了報告・処分(中間処理)終了報告の通知 <情報処理センター⇒排出事業者>
情報処理センターは、運搬終了報告または処分(中間処理)終了報告を受けた場合、排出事業者のパソコンに運搬または処分(中間処理)が終了した旨の通知を行う(②・③の通知) -
5)2次マニフェスト情報登録 <中間処理業者⇒情報処理センター>
中間処理業者は、廃棄物を引渡した日から3日以内に産業廃棄物の種類ごとおよび行き先(処分事業場)ごとにマニフェスト情報の登録を行う(④の登録) -
6)中間処理後の廃棄物の運搬終了報告 <収集運搬業2⇒情報処理センター>
収集運搬業者2は、運搬が終了した日から3日間以内に、情報処理センターへ運搬終了報告を行う(⑤の報告) -
7)中間処理後の廃棄物の最終処分終了報告 <最終処分業者⇒情報処理センター>
最終処分業者は、最終処分が終了した日から3日間以内に、情報処理センターへ最終処分が終了した旨を報告(⑥の報告) -
8)運搬終了報告・最終処分終了報告の通知 <情報処理センター⇒中間処理業者>
情報処理センターは、運搬終了報告または最終処分終了報告を受けた場合、中間処理業者のパソコンに運搬または最終処分が終了した旨の通知を行う(⑤・⑥の通知) -
9)中間処理業者からの最終処分終了報告 <中間処理業者⇒情報処理センター>
中間処理業者は①により登録されたマニフェスト情報に対して、⑥の最終処分終了報告を受けた日から3日以内に情報処理センターに最終処分終了報告を行う(⑦の報告) -
10)排出事業者への最終処分終了報告 <情報処理センター⇒排出事業者>
情報処理センターは、中間処理業者より最終処分終了報告を受けた場合、排出事業者のパソコンに最終処分が終了した旨の通知を行う(⑦の通知) -
【情報処理センターへの登録及び報告期限】
情報処理センターへの登録及び報告の期限については、3日(日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律に規定する休日、1月2日、同月3日及び 12 月 29 日から同月31 日までの日を除く。)以内とすること(規則第8条の 31 の6等)。 ただし、適正処理の確保の観点から、原則としては即時に登録及び報告することが望ましいこと。
(6) マニフェスト使用義務の除外
排出事業者が産業廃棄物を自ら処理する場合には、マニフェストの交付は不要です。また、例外的な次のケースに該当する場合も、マニフェストの交付は不要です。
(規則第8条の19第1号から第11号)
- 産業廃棄物の処理を事務として行っている都道府県等に、運搬または処分を委託する場合
- 廃油処理事業を行う港湾管理者または漁港管理者に、廃油の運搬または処分を委託する場合
- 古紙や鉄くずなど専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集運搬または処分を業として行う者に、当該産業廃棄物のみの運搬または処分を委託する場合
- 再生利用認定制度により認定を受けた者に、その認定品目にある産業廃棄物の運搬または処分を委託する場合
- 広域的処理認定制度により認定を受けた者に、その認定品目にある産業廃棄物の運搬または処分を委託する場合
- 再生利用に係る都道府県知事の指定を受けた者に、その指定品目にある産業廃棄物の運搬または処分を委託する場合
- 国に、産業廃棄物の運搬または処分を委託する場合
- 運搬用パイプラインやこれに直結する処理施設を用いて産業廃棄物の運搬または処分を行う者に、当該産業廃棄物の運搬および処分を委託する場合
- 産業廃棄物を輸出するため運搬を行う者に、わが国から相手国までの運搬を委託する場合
- 海洋汚染防止法の規定により許可を受けて廃油処理事業を行う者に、外国船舶から発生した廃油の運搬または処分を委託する場合
(7) マニフェストに関する義務と罰則
マニフェストの不交付、虚偽記載、記載義務違反および保存義務違反など、マニフェストに係る義務を果たさない排出事業者および処理業者は、万一、委託した廃棄物が不適正に処理された場合、都道府県等から措置命令(法第19条の5第1項)を受けることがあります。また、違反の内容によっては刑事罰を受けることもあります。
マニフェストに関連して、以下のような違反があった場合、措置命令や罰則の対象になります。
産業廃棄物管理票を交付せず、または規定する事項を記載せずもしくは虚偽の記載をして産業廃棄物管理票を交付した場合 |
措置命令・ 罰則(法第27条の2第1号) |
---|---|
管理票交付者に管理票の写しを送付せず、または規定事項を記載せずもしくは虚偽の記載をして管理票の写しを送付した運搬受託者 |
措置命令・ 罰則(法第27条の2第2号) |
処分受託者に管理票を回付しなかった運搬受託者 |
措置命令・ 罰則(法第27条の2第3号) |
管理票の写しを管理票交付者に送付せず、もしくは規定する事項を記載せずもしくは虚偽の記載をして管理票の写しを送付した処分受託者 |
措置命令・ 罰則(法第27条の2第4号) |
管理票またはその写しを保存しなかった管理票交付者、運搬受託者、処分受託者 |
措置命令・ 罰則(法第27条の2第5号) |
受託していないものについて、虚偽の記載をして管理票を交付した産業廃棄物収集運搬業者もしくは特別管理産業廃棄物収集運搬業者または産業廃棄物処分業者もしくは特別管理産業廃棄物処分業者 |
措置命令・ 罰則(法第27条の2第6号) |
管理票の交付を受けていないにもかかわらず、廃棄物の引渡しを受けた運搬受託者および処分受託者 |
措置命令・ 罰則(法第27条の2第7号) |
運搬受託者および処分受託者が処理または処分を終了せず、管理票の送付または報告をした場合 |
措置命令・ 罰則(法第27条の2第8号) |
情報処理センターに虚偽の登録をした電子情報処理組織使用事業者(排出事業者) |
措置命令・ 罰則(法第27条の2第9号) |
情報処理センターに報告せず、もしくは虚偽の報告をした運搬受託者および処分受託者 |
措置命令・ 罰則(法第27条の2第10号) |
管理票制度違反に係る勧告に従わない者に対して行う勧告に係る措置の命令に従わない者 |
措置命令・ 罰則(法第27条の2第11号) |
マニフェスト確認義務(一定期間内に運搬または処分が終了したことを確認する義務)に違反した排出事業者 | 措置命令 |